楽に始まり楽に終わる

私がはじめて焼き物を本格的に習った先生は、始めの1〜2年は茶碗しか作らせてくださいませんでした。もちろん合間にコーヒーカップなど好きなものを勝手につくることはできても、教わるのは茶碗、それも楽茶碗が中心でした。そして、その茶碗がなんとか形になるのに2年くらいはかかり、次に本焼の壷を作らせてもらえるようになる、そのステップの間に、焼物の面白さ、奥深さが一層つのって、その後何十年も続けることになったように思います。そして年をとって本焼を焼く体力がなくなっても、楽をゆったり焼いて楽しみたい、それが私の夢です。

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スーさんの
思い入れ一品
 

左の茶碗は、私の最初の先生の作品で、銘を「初霜」といいます。紅葉が真っ赤に染まり、やがて寒さがまして霜がおりる、そんな風情を想って先生がつけられました。ちょっと大ぶりで、塩釉楽です。
右の黒楽は、先代の道年作で、釉薬の薄いところが赤く色づき、勝手に「宵桜」等と呼んで楽しんでいます。
楽焼の歴史  昔から、一楽二萩三唐津といって茶の湯では楽を大変重んじています。その成り立ちからいって、まさに楽は茶の湯のために作られたお茶碗と言えましょう。
 楽焼きの元祖は帰化人の阿米夜(あめや)という人物で、その子が初代の長次郎です。長次郎はもと瓦職人で、利休の知遇を得てから彼の指導のもとに、抹茶茶碗を作るようになりました。その後豊臣秀吉の命により、聚楽第の瓦や茶器を焼いて賞賛をうけ、秀吉から「楽」の金印を受けて、以来楽の姓を名乗るようになったそうです。
当時、長次郎の茶碗は聚楽第の中で焼かれたので聚楽焼といわれ、楽印を拝領した以後、楽焼と呼ばれるようになりました。以来約400年、楽家代々絶えることなく今日まで、独特の手法を伝えて来ました。まさに日本の焼き物の中でも最も日本的な焼き物と言っても過言ではありません。
楽家について 楽焼では楽家で焼いた楽焼を本窯物と呼び、本阿弥光悦や尾形乾山など楽家以外で焼かれた物を脇窯ものと呼んで区別しています

初代:長次郎
(文禄元年(1593)没):
 楽といえば必ず長次郎の作品は取り上げられます。そのシンプルな形と、まだ焼成上十分な高温が得られなかったせいかとは思いますが、光沢の少ない落ち着いた黒楽茶碗は、利休の説いた「わび・さび」を具現した世界と感じられます。ここに写真が載せられないのが残念です。
二代:常慶(寛永12年(1635) 没):
 茶碗より香炉、菓子皿などの細工物に優れていました。常慶の代で現在の楽家の場所に住居を許され、楽の印をいただいて楽家を名乗ったともいわれます。
三代:道入(ノンコウ)(明暦2年(1656)没):
 名人と呼ばれ、作品は導入というより「ノンコウ」作といわれます。この時代になると、初代の頃より釉薬や焼成に変化が見られます。ノンコウと言われた理由は、千家三代の宗旦から「ノンコウ(乃無己)」名の竹花入れを受けたことに因るそうです。陶印に特徴があり、道入と了入のみ楽の白部分が自となっています。
四代:一入(元禄9年(1696)没):
 朱釉が美しく、その特徴とされています。
五代:宗入(享保元年(1716)没):
 光沢の少ない「カセクスリ」に優れていました。
六代:左入(元文4年(1739)没):
七代:長入(明和7年(1770)没):
八代:得入(安永3年(1774)没):
九代:了入(天保5年(1834)没):
 楽家中興の名手、ノンコウの再来といわれています。
十代:旦入(安政元年(1855)没):
十一代:慶入(明治35年(1902)没):
十二代:弘入(昭和7年(1932)没)
十三代:惺入(昭和20年(1945)没)
十四代:覚入()
十五代:吉左衛門
こうやって、15代までの没年の流れを眺めると、代々家を継ぐということの重みを改めて感じます。。
楽焼について 楽焼の特徴
 楽焼の特徴はなんといってもその柔らかみと温かさを感じる質感です。これは楽焼が他の焼き物に比べてずっと低温で焼成され、急激に冷やされることに起因します。普通の焼き物は最高1300度程度まで、じっくり時間をかけて焼きます。一方楽焼では、800度前後までで、短いときには窯に入れる時間が2〜3分ということもあります。その焼き方に耐えるため、粘土にはシャモットといわれる煉瓦の細かい粉のような物を加えます。私の記憶では、これにより内部に空気の隙間が多くでき、多孔質の焼き物になると同時に、急激な焼成や冷却による膨張・収縮に耐えられるということだったと思います(もし違っていたらすみません)。この決定的な焼き方の違いで、軟質で、多気孔質、貫入という釉薬のひび割れの多い楽焼がうまれます。
 このため楽焼は、人の肌に柔らかく、あの温かみを感じさせるのです。この性質にあった形を求めると、ろくろ成形のきちっとしたものより、てびねりのふぞろいな丸みが似合います。
その一方柔らかい焼きのため、壊れやすく、また多孔質のため水分が含まれやすいので、丁寧な扱いが必要です。

種類

黒楽
 黒楽は古くは加茂川黒石を使った釉を厚くかけ、釉肌はやわらかくて光沢がなく茶がかっています。加茂黒石を使った釉薬はとても溶けにくいため、1000度位までの温度で時間をかけて焼成されます。最近の釉薬は溶けやすいように鉛分が多く入り、光沢を帯びた物が多いようです。

赤楽

 赤楽は、唐土(とうのつち 鉛釉)に長石分を混ぜた半透明の白釉を赤い聚楽土の上にかけています。最近のものでは白素地に黄土で化粧がけした上に透明な楽釉をかけています。800度くらいの低温で、短時間で焼成できます。

その他
 赤楽、黒楽という代表的な楽焼の外に、塩分をしみ込ませた素地に白玉釉をかけ、柔らかなピンク色が特徴の塩釉(写真参照)や、透明感のある茶色の飴釉、その他青緑釉などいろいろな種類があります。
リンク集 手のひらの中の宇宙 楽焼 数少ない楽焼きについてのサイトです。楽美術館へもリンクできます。
筆のまにまに 陶芸ひとかじりでは、楽焼を七輪で作る方法を見ることができます。
楽「長次郎研究」 日本根付研究会理事の奥野秀和氏の長次郎研究です。