やきもの秋手のぬくもりを求めて土もの

やっと暑い夏が過ぎ、涼しさを肌で感じるころになると、焼き物も温か味が恋しくなります。そんな時には、やはり土の手触りがやさしく、自然釉の色合いも秋色の濃い信楽や、備前のような土ものが最高です。備前と信楽は焼き〆で自然釉という共通項があるにもかかわらず、好みという面では備前好きと信楽好きとに分かれる傾向があるようです。かくいう私も信楽好きで、備前が嫌いということはありませんが、それほどでもありません。そんなことも含めて、信楽と備前をとりあげてみたいと思いますが、まずは信楽から始めさせていただきます。

焼き物春夏秋冬 トップへ戻る

スーさんの
思い入れ一品
信楽焼 桧垣紋鬼桶水指

これは、信楽焼の作家で、裏千家の茶の湯の師範でもある奥田英山先生の作品です。奥田先生は、私が若いころからお教えをいただき、敬愛している先生で、私の信楽焼きは皆先生にご指導をうけながら焼いています。このページを書くので、あらためてなぜ信楽が好きなのか考えてみましたが、言葉ではうまく表せません。でも、その形、色合い、土味がひとつにまとまって、自然そのものを感じさせるからではないかと思います。一つ一つの焼き物が個性のある顔をもち、しかも荒々しさあり、静けさあり、温かさあり、もう見ていただくより説明のしようがありません。それに実際に窯を焚いてみると、その焼き物がその顔になるまでの過程がわかり、いっそういとおしくなります。
信楽焼の歴史 六古窯について
「六古窯」の名づけ親は、古陶磁研究家の小山冨士夫氏です。、平安時代後期から室町時代にいたるまで、多くの窯場が発生しましたが、その中で生き残った重要古窯を総称したもので、「信楽」「備前」「常滑」「瀬戸」「越前」「丹波」をいいますが、これらは皆現代にまで生き残っています。
信楽焼は、天平14年に聖武天皇が離宮を近江紫香楽に設立され、その宮の布目瓦や須恵器の製造からスタートしたと言われています。こういった瓦などの技術は百済からの帰化人から伝わったものです。また信楽の周辺には無尽蔵ともいえる良質の粘土があったことも焼き物が盛んになった大きな要因です。
その後、営々と生活用品として製作され続けられたと思われますが、鎌倉時代に須恵器とは大きく趣の違う信楽が登場します。この頃は、農業の隆盛により種壷などの貯蔵用小物や,擂鉢が作られています。須恵器の時代は粘土も目が細かくロクロによる成形が行われていましたが、信楽ではその特徴として、長石、硅石の多く入った荒い粘土を紐作りで成形し穴窯で焼成しています。技術的には退歩したように見えますが、室町時代にはいり、鎌倉時代よりはおおきい、ゆったりとした壷などがつくられるようになり、やがてその美しい自然釉、火色といった風合いが茶陶として愛好され、新たな信楽の発展を生むようになります。

茶陶としての信楽
外来の唐物が茶陶としてもてはやされる中、和物として早く茶会記の中に登場するのが、備前・信楽などの焼締の焼き物です。16世紀の中頃、室町時代には、信楽や備前の水指が使われています。この時代は、それまでの唐物至上主義から、次第に新しい美意識として「冷え、凍み、寂び、枯び」といった価値観が生まれ始めました。この美意識に、備前・信楽などの焼物の持つ素朴さと内在するエネルギーがマッチし、さらに京都に近いという地の利もあって、茶陶として多く用いられるようになっていきます。
茶人武野紹鴎は、紹鴎信楽といわれるほど信楽焼を愛用し、特に鬼桶水指、蹲花入などを好みました。これが後に千利休、千宗旦、さらに下って、小堀遠州に受け継がれていきます。作家としては金森宗和の支援で大成した野々村仁清の仁清信楽、本阿弥光悦のひ孫、本阿弥空中の空中信楽などが有名です。

徳川後期から明治時代
茶陶という限定した使用目的で水指や花入れが製作された一方、次第に日用陶器としての信楽焼がの生産が増していきました。水がめ、徳利、火鉢、植木鉢、神仏器などが大量に登り窯で効率良くつくられるようになり、地場産業として発展してきたわけです。なお信楽というと「狸」という印象が大きいようですが、狸が現在のように多く作られるようになったのは昭和になってからのようです。
代表的な信楽焼
蹲(うずくまる):
底が大きく、人がうずくまって座っているような形の、高さ20〜30cmの壷です。元は種壷や油壷として使われましたが、茶陶としては花入れに使われます。素朴な野の花が似合う器です。

この写真のうずくまるは、スーさん作なので、もうひとつですが、イメージをおわかりいただくために載せました。






鬼桶:桶型で茶陶で水指として使用されます(冒頭の写真)。元は糸を紡ぐときに使った緒桶で、それが「緒に桶」、さらに「鬼桶」となったといわれています。

(信楽焼作家・奥田英山ホームページより)
リンク集 焼き物事始 あすネットが提供する、焼き物の情報ページです。やきののの歴史、東西の焼き物の違い、やきものはこうしてできるなど、いろいろな情報の中に、信楽焼も入っています。
奥田英山ホームページ 英山ギャラリー「峯照庵」にある多くの信楽焼作品をご覧になれます。
信楽の里から 信楽焼作家である、神崎紫峰さんのページです。沢山の作品と同時に古信楽古丹波のすばらしい焼物の写真が楽しめます。
小堀遠州の世界(遠州流茶道会) 茶の湯入門の中の「茶の湯の道具の基礎講座」にいろいろな焼物についての説明がまとまっています。その中に信楽焼についても記載されています。