| 第74回 10月13日 |
修業の場、黙る大切さ学んだ![]()
| 9月29日。7日に引き続き、日本橋のカウンセリングルームで十数人の参加者とともに2回目の『おひるねうさぎミーティング』を行った。 「うさぎとかめ」の昔話を逆手に解釈し、「うさぎがピョンピョン先に行くようにがんがかなり進行していても、そこでゆっくりお昼寝していれば、後から追いついたかめさんと一緒に寿命をまっとうできる」と名づけた。「体中ががんでも、元気で幸せに生きていける方策をあらゆる分野から探していこう」という趣旨で温めてきたプロジェクトの小さな一歩目だ。 セミナーではなくミーティングとした。がんが進行して西洋医学的には「これが一番」というような正解がなくなった状況の患者にとって、どこかにきっとあるはずの治る道、幸せに生きられる道への答えは、百人百様。誰かから何かを習ったり、教えられたりすることではない、と考えたからだ。患者は「最終的には自分で自分の体を生かし健康にしていく道を探すのだ」という気構えを持たなくてはならない。その場合、講師が何かを教えようとするセミナーではなく、患者は情報の受け手であると同時に送り手であり、情報を検証する一員だという意識で参加し、専門家も対等な位置から加わるミーティングであるのがよいと思ったのだ。 ホームページのみの呼びかけで集まったので、ほとんどが初対面。私と同じように再発転移、全身転移という厳しい状況を抱える方が多いのだが、健康な人たちの会議に数段勝る迫力といえるほど、気合に満ちたひとときだった。 午後1時に始まり、終わったのは7時……。患者同士だからこそ話せること、逆に言えば患者になったとたん、周りと話せなくなることが多いのだと、改めて感じた。 「1人じゃ怖くてお見舞いに行けなかったの」「安らかな気持ちで亡くなってほしいの」「PTAの役員断れてうらやましい。私も病気になりたいわ」「私も白髪隠しに便利だと思ってカツラ買ったのよ。そしたら主人が『そんなものは病気にでもなってからにしてくれ』って言うんで、すぐ返品しちゃった」 ――耳を疑うが、こんなことを言われたという類の話が、初めのうちは続出。みんな、とてつもなく悲しく悔しい思いをしている。でも、自分を抑えようという気持ちの強い人がなりやすいのががんという病気。だから吐き出せない。たとえ話したとしても、「他山の石」的な相手の反応で傷つく。結局、話すことをやめてしまう。 「ここでなら」という思いが熱気を呼び、同じ状況の中で明るく元気な仲間の姿が、自らの希望につながる。前向きで具体的な話もたくさん出て、「治ることに向かえるのでなければ、元気、わかないよね」と皆、口を揃そろえて言う。 周りの人は想像力を持ってほしい。もし、それができないのであれば、せめて「何も言わない」という選択があることを知ってほしい。黙ることを選ぶ……それは、私たちの日常生活を支える最も必要で大切なことであるはず。 それにしても、このおしゃべりな私に、黙る大切さを書かせる境地に導いたがんという病気は、「この世」という修業の場の指導者としてなんと優秀なのだろうと思う。であれば、よき指導のもと、一日も早く修了証書をもらってこの指導者とお別れすることを目指したい。「がんとのステキな別れ方」について、それぞれのノウハウをいっぱい持った、おひるねうさぎの仲間と共に。 |