第55回  3月17日

解釈次第で運の良さは決まる

  3月9日。目がかゆい! 鼻水も! 今年は花粉が多いというが、3年ぶりに花粉症が再発した。私はくしゃみをしながら、ある患者会に参加していた女性のことを思い出していた。

  「私、本当に運が悪いんです。ある時、交差点で信号待ちをしていたら、車が突っ込んできて跳ね飛ばされたんです。命はとりとめたんですが、けがをして大変でした。運転していた人がひどい花粉症で、その交差点で曲がろうとした瞬間にすごいくしゃみをして目をつぶったそうです。それで私をはねたというわけですね。それから何年かしたら、がんになって……私、本当についてないんです。それで手術したんですけれど、術後の調子が良くなくて、この前もテニスをしていたらラケット振りづらいし……」。がんを知って間もない4年前のこと。まだ情緒不安定なその頃の私に、夫はよく付き合って、こういう場に一緒に参加してくれたのだが、彼は帰りにこう言った。「車にはねられても大丈夫だったんだろう。手術もうまくいって、今テニスもできるんだろう。本当はとても運がいいのになあ」

  

  患者会の役割の一つは、ここだから言い合える愚痴を吐き出すこと。彼女があの場で「運が悪い」と連発したことですっきり前向きになれたならいいわけだが、私は花粉症の季節になるたび、「元気にしてるかな」と、彼女を思い出す。

  私の花粉症との付き合いは、7年前から。かなり重症だったが、赤ちゃんを授かりたい一心で一切の薬を使わず、マスクに花粉よけメガネに帽子の完全防備で対応。待ち合わせした相手が「怪しい人!」と逃げてしまったことがあったっけ。そんな花粉症も、がんになってからは、使われた薬のせいか、治っていた。それが再発……。正直、「がんは全身あちこちにあるし、その上、花粉症なんて……」と思わないではなかったが、「がんになって花粉症が治ったのだから、花粉症が再発してがんが治るかもしれない!」と周りには言いまくった。私はまだまだ人間ができてなくて、講演などで「心の中をバツ言葉でなく前向きなマル言葉で満たそう!」などと話しても、心の奥ではマイナスな思いがうずまいている時もかなりあり、せめて口に出す言葉だけでもと心がけたのだ。

  

  以前、対談でお会いした武藤喜一郎さん。再発した5センチもの腎臓がんと10年以上共生し、患者会「蕗ふきのとう」の代表など多方面で活躍し、73歳という年齢を感じさせない。その武藤さんが「あらゆることはどのようにも解釈でき、解釈の方向が肯定的か否定的かで『運の強さ』が決まる。運の強さとは、自分にふりかかるすべてを『自分は運が強い』ととらえることで、身につくもの」という考え方があることを教えてくれた。言葉や思いは、良いものは良いものを、悪いものは悪いものを引き寄せるのだと私も思う。

  痛みがある時は「体ががんを抑えこもうとしている」。髪が抜ければ「薬が効いている」と考える。明日はがんになって5回目の誕生日。「まだ48歳、これからだ!」と思おう。そして、20日に迫った四谷区民センターでの「うさぎのユック」の朗読コンサート。まだ空席があることも、「色々な方に声をかけがいがある」と考え、気合を入れます。お越しいただけたらうれしいです。


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