第47回  1月20日

新年も精いっぱい お芽出たく

  後々何十年も使うため、プロフィル写真を40代のうちに撮っておいた方がいいと聞いて、「なるほど」と思った私。絵本「うさぎのユック」の帯にも写真が必要ということで、去年の11月、撮影した。メルヘンチックな観覧車やヨーロッパ風の建物を背景に乙女気分でにこやかに。それが新年初のこの「ゆっくり日記」から使われている。

  この写真を受け取った担当の記者は電話口で「きれいですね」と言った。一瞬相好を崩した私は、「え? あらそんなこともないわよ。でも、けっこう若く撮ってもらえたかも……」とまくし立てようとした。しかし、その後に続いた「どこですか? いいところですよね」という彼の言葉で踏みとどまった。ロケ地が袖ケ浦の東京ドイツ村であることなどを何事もなかったように話し、事なきを得たが、あとわずかで、私の勘違いに気づいた記者にあわてて取り繕わせるところだった。しかし、「『きれいですね』と若い男性に言われた!」と思った瞬間、私の免疫力が絶大に上がったことは間違いない。

  私のおめでたい性格は生まれつき。小学校の学芸会の合唱。最前列だった私は練習が始まって数日後、最後列に移動するように言われた。あの時の先生の「あなたの声はよく通るから」という言葉。「よく通る良い声だから後ろに回った」と何十年も勝手に思い込んできたが、本当にそうだったのか……。でも、「良い声だから」と思い込んだ私の方が「下手だから」といじけた私よりずっとすてきな生き方をしたはず。だからわからないままでいい。

  祖母の茶室には「芽出度」と書かれた元東大寺管長・故清水公照師の掛け軸がある。当て字とは思うが「芽が出る度」と書く「めでたし」は、とてもいい。めでたく幸せになるには、いつも今をみつめ、朝が来る度、重い土をぐっと押し上げ芽を出すような感覚で、今日一日を精いっぱい生きることなのだろう。

  元旦。お雑煮を食べ終え、近くの川辺を夫と散歩。新年初練習にとフルートを持ってきたが風が強く、吹くのはやめにした。散歩している犬たちを見ていたら、3年前に亡くなった我が家のチャロを思い出した。チャロは、ひたすら前を見て、散歩している今がうれしくてたまらないというように私たちを引っ張り回したっけ。橋を渡る時、川を眺めながら歩いている人とぶつかりそうになった。ふと、「横を向きながら歩くのは人間だけだ」と思った。動物は横を見るなら足を止め、歩く時は前を見る。よそ見しながら歩いたりはしない。人間だけが、横を見たり、後ろを見たり、時には見えないはずのずっと先を見ている気になったりして毎日を進める。だからぶつかり、不安にもなる。

  1月13日。腫瘍しゅようマーカーが上がり、経口の抗がん剤が新たに処方された。今までの抗がん剤に耐性ができ、薬が増えたという事実が重くのしかかる。「どんどん薬が増えていき、そのうち効く薬がなくなっていくのか」と理詰めで先々を予想し、情報を収集すれば不安はつのるだけ。私は「うれしそうに散歩していたチャロのようになろう」と自分に言い聞かせた。

  あさって22日は、調布市文化会館たづくりでの「ふぅちゃん」の朗読コンサート。お芽出たい気質全開で最高の舞台にしたい。皆様、今年もよろしくお願いします!



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