第46回 12月24日

「あと一歩」奇跡的な回復の鍵

  12月11日。聖路加国際病院で継続的に行われている「がんと共にゆったり生きる会」というセミナーに参加した人たちのためのクリスマスパーティーに出席。

  私がこのセミナーに参加したのは3年前の入院中。呼吸が普通にできず、痛み止めの薬で体中の痛みを抑えていた時期。がりがりにやせて折れそうな足で酸素ボンベを下げた車いすを押して、セミナーに参加した。医師、看護師、栄養士ら専門家からがんと共生していく上でのレクチャーを受けられた。患者同士、自分の気持ちを語り合うグループカウンセリングも行われ、充実した内容だった。

  私は入院直後のパニック状態の時、精神専門看護師の川名さんのカウンセリングを受けて立ち直れたが、その川名さんはじめ聖路加の看護師さんたちが主催しているセミナーがあると夫が教えてくれたため、何がなんでも参加しようと思ったのだ。参加者は聖路加の患者には限らず、がん患者本人ならOKだったが、私のように、歩くのも呼吸するのもやっとの入院患者が参加するのは、珍しいことだったと思う。

  見るからに厳しい状態だった私が、数時間のセミナー受講に耐えられるか、また他の参加者を不安な思いにさせないか心配もあったと思うが、当時の私は、自分が参加できさえすればいいという勢いで申し込みをしたことを思い出す。

  病人である本人は自分の姿が見えない。周りからは普通の状態まで100歩も200歩もあると見えても、意外に本人は「あと一歩だけ踏み出せば健康な人とかわらなくなれる」と思うような能天気な強さがあるものだと、今、他の患者の方たちに接してみてもよく感じる。その「あと一歩で何とか」と、事態の割におめでたくもたくましく考える本人の芽を周りが摘み取らないことは、奇跡的回復のための重要なポイントではないかと私は思う。

  あの時、私がセミナーに参加することを受け入れてくれた看護師さんたちの懐の深さと、私の生きるエネルギーにつながると感じて、セミナーの存在を教えてくれた夫に改めて感謝し、パーティーのひとときを楽しんだ。夫は私が元気になってからは、がん関係の集まりに付き合ってくれることは少なくなったが、このパーティーにだけは、一緒に元気に1年を過ごせた幸せを確認するためのようにつき合ってくれる。

  18日、19日の土日。2日続けて昼も夜も私の手料理。家事の中で料理は体調が一番反映する。ダメな時はまるでできなかった。今は体調が良い証拠。片付けは苦手だが、料理は嫌いではない。自分がよく作るような、がんのための工夫がある料理を誰かに作ってもらえればいいなとも思うが、夫は家事の中で料理だけは一切手伝わない。「私、次は男に生まれて、寝坊して起きたらこんなお料理を作ってくれている奥さんと結婚したいな」と言うと、夫はおいしそうにスプーンを口に運びながら、「ん? 苦労するよ」と言った。

  29日は聖路加のチャペルで「うさぎのユック」のチャリティー朗読コンサート。入院患者さんにとって、「あと一歩で!」という元気につながるものにしたいと思う。今年は今回でおしまい。新年は1月13日、女優音無美紀子さんとの対談企画でスタート。「ゆっくり日記」は20日からです。今年1年、ありがとうございました。来年が皆様にとって良い年になりますように!


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