| 第42回11月18日 |
友の思い継ぎ「宝物」探そう
| 「絵門さん、体、大丈夫かしら?」 見舞いを終えて病室を出て行く私を見送りながら、彼女はそう言ったという。彼女はその日の夜から意識がなくなり、1カ月あまりのこんすい状態を続けて11月6日、天に向かった。 田山充子さん。再発、全身転移しても必ず生きられる道はあるはず、その道を一緒に探そうと声をかけ合ってきた仲間。同じ学年というよしみで、知り合って日は浅くてもすぐ交流は深まり、症状が厳しくなってからは毎日携帯メールでやりとりした。 「今朝はどう? 必ずよくなるからね」の返信に「はい、前進あるのみです」と絵文字でにっこりマーク。抗がん剤が効かなくなって、ある健康法にかけていた時は「きっとこれが100個目の宝物。大切な大切な宝物」というメールが届いた。 がん治療は、特に再発転移患者には、まだ決め手になる答えが出ていない。だからといって絶望ではなく、どこにどんな「当たり」になる方法があるかわからない。99個目まで違っても、100個目が宝物かもしれない。だからあきらめない、と語り合ってきた。治療仲間を失った時、「絵門さん、泣いていないで。亡くなったお友達の分も一緒に探そう。探せるから100個目の宝物」と、私の気持ちを立て直してくれたのも彼女だった。 充子さんは3人の息子さんのお母さん。「厳しく育てたわ。殴ったことだってある。みんな『武士』みたいに育って……。本当に私元気だったのよ。よく働いてよく子育てしてきた」と笑った。「君たちは、がんファイターだね」が、ご主人の口癖。わが夫同様、妙にやさしくするのではなく、突き放しながら妻を支えていることが、彼女の話から感じられた。 美人で頭が良くて、同世代にこんなすてきな人がいると思うと誇らしかった。皮膚転移のため呼吸もつらく、どんなに大変だったかしれないのに、泣き言一つ言わず、いつも大きな目をキラキラと輝かせていた。 そして、意識を失う直前に思いをはせたのは、自分のつらさではなく、仲間である私の体調だったのだ。 がんは心の持ち方一つで、厳しい症状も快方に向かわせられる病気だと思う。だから、がん患者同士、心について話し合い、がんと付き合うために自分の心を磨こうと、みな試行錯誤している。 しかし……。 先日、ある人が「がんはね、心がきれいじゃないと治らないのよ」と言った。鬼の首でも取ったように、断定的に3回も繰り返して。 がんでもないのに……。 「がんになられた方、みんなとてもすてきですよ」とだけとっさに言った私。茶髪でロングヘアーのウィッグなのに、ヤンキーのように「心がきれいだから、天国でもそういう人が必要で早く呼ばれる場合だってあるっつうの! 感受性が強くて優しいからがんになる人、多いんだよ。がんの種類も百人百様。何にも知らないくせに単純な話にするんじゃねえよ!」と言えなかった自分が歯がゆかった。「ダメ。怒っていたんじゃ、前に進めない!」。充子さんがいたら、私をしかったかなと思ったら涙が出た。 充子さんは、間違いなく母を誇りにして、愛と強さを奥にそなえて生きる3人の日本男児に命をつないだ。 私は、彼女の思いを引き継ぎ、西洋医学の助けは得つつ、これからも100個目の宝物探しを続よう。 来週は紙面の都合でお休み。次は12月2日です。 |