| 第24回 5月13日 |
明日のこともわからないのにニャン ![]()
| 5月2日。わが家のペット、小春と小夏の誕生日。満13歳、人で言えば還暦にあたる。深大寺のお花屋さんが飼っていた三毛猫から生まれた7匹の赤ちゃんのうち、2匹をもらってきた。以来ずっと一緒に暮らす家族だ。 小春と小夏は2歳のころ、うっかり開けたままになっていた扉から出ていったことがある。家の中だけで飼われていた彼女たちにとって、ノラ猫が縄張りを張っている表は未知の世界。私が気付いた時は、恐らくボス猫にでも追い立てられ散り散りになった後だったのだろう、2匹とも姿が消えていた。それから3日間、私は「小春〜、小夏〜」と朝に晩に鈴を鳴らしながら近所を捜し歩き、冷たい秋風の日も一日中窓を開けて帰りを待った。しかし戻らず、ついに迷子のペット捜し専門の探偵に依頼した。 3日後、わが家から南に10分ほどの家の方が探偵の貼ったポスターを見て、小春が迷い込んでいると教えてくれた。気が弱い小春は「おうちに帰りなさい」と言われるたびに、その家の奥に入り込み、3階の部屋から一歩も動かなくなったという。小春らしい。 それから4日後、西に15分ほどの公園で小夏を保護。「姿を見た」という情報を元に探偵が張ってくれたのだ。「ウー」とうなり声をあげて興奮していた小夏。やせ衰え、小さな体がいっそう小さくなっていた。やんちゃで気が強い小夏は食べ物もまともに見つけられないのに、気持ちだけはノラ猫たちに負けじと公園で1週間を生きぬいたのだろう。小夏らしい。 私が入院で不在だった2年前、神経質な小春は排尿障害を起こしたが、小夏はどこ吹く風だった。小春の立ち姿はいつも前脚をそろえて行儀よく、小夏は前脚を広げての仁王立ち。同じお母さんから同じ日に生まれてきて全く違う。もし小春が西に小夏が南に行っていたら、もし2匹が一緒に行動していたらどうだっただろう。それぞれの個性に合った自分の道を選んだから、彼女たちの大冒険は事なきを得たのだと私は思う。 さて、私の腫瘍マーカーは再び170まで下がった。今とりあえず私は元気。その理由をよく尋ねられる。それに具体的に答える時、「あくまで私の方法として、参考として話半分に聞いてほしい」とくどいように前置きをする。 遺伝子もがんも、同じものはない。他の人に追随し、ただ同じことをするのは危険。自分なりの方法に行き着くのが大切だと思うからだ。 実は、この連休中、私はふさぎがちだった。原因は「がんだからそのうち悪くなっていくのだろう」と思い込む人からの言葉。 「まだ元気なんですね」「まだ働ける間は頑張っているんですね」「そのうち動けなくなった時のためにメールマガジンを最後の発信方法として確保してはどうですか」…。相手に悪気はない。でも私は胸がどきどきして、涙腺がゆるまないように力を入れていた。私は病気が悪くなることを前提に生きているわけでは決してない。 私のくつろぎタイムには必ずそばに来るニャンコたち。「まだ元気だけど、13歳になったから、猫の寿命だとそのうち…」なんて、小春も小夏も考えたことはないはず。 だから、彼女たちの澄んだ瞳は子猫の持と変わらない。柔らかい毛をなでていたら、普段は反応の違う小春と小夏が、珍しく声をそろえて言った気がした。 「なんで『まだ』とか『そのうち』とか言ってるの?明日のこともわからないのにニャン」 |