第13回 2月19日

いろいろな療法上手に取り入れ

  1月22日。聖路加のレストランで点滴をしながら食事中、「絵門さん、相変わらずいろいろやっているんですね」。

  がんに良いという飲み物が入ったペットボトルを口にした私に、治療仲間が言った。

  「うん、前よりは絞り込んだけど、やっぱり『あれがいい、これがいい』は続けてる」。私は答えた。

  著書『がんと一緒にゆっくりと』。著者の意に反して第5章が異常にうけた。がんを治すという療法や商品を次々試していった経緯の部分だ。できれば書きたくない。でも、がん患者なら誰でもぶつかる問題に違いないと思ったから書いた。

  寝るだけでがんが治るという百万円の布団、その中に入って瞑想めいそうするとがんが治るという8本のステンレスの棒でできたピラミッド、がん患者は普通の人の数倍飲むように言われてまとめ買いし、飲んだ結果肝臓が腫れてしまった健康食品……。買いあさった結果、目の玉が飛び出るほどの金額を費やした。

  私の手持ちのお金が底をつく時は死んでいるか、がんが治っているかのどちらかだと思っていたら、私は死にもせず治りもせず、死にかけて入院していたと、恥をしのんで書いた。

  がんと無縁な人にとっては、ただあきれる話かもしれない。でも、がんを経験している人たちには決して笑えない。笑って済ます話でも哀れを誘う話でもなく、真剣勝負であることをわかってもらえるように書くため、どれほど頭を悩ませたかしれない。

  「試した商品を撮影したい」と取材時に依頼されることも多かった。「私、こんなものを買っちゃいました。バカだったでしょう」とご披露したのでは神経を使った意味が台無し。本を知ってもらいたい一心で、テレビの取材も受けていた私の最も大きなジレンマだった。

  がんの治療は、西洋医学の分野でもまだ模索の段階。逆に言えば、0・1%の可能性でも、そこに希望の光があれば、それを求めてよいのだと私は思う。百人百様のがんに百種百様の方法があるはず。本人が試してみる気になったものについては、医療関係者を含めた周囲の人たちはバカにするのでなく、可能性を一緒に探るか、せめて見守ってほしいと思うのだ。

  もっともそれによって有効な治療を受ける機会を失ったり、経済的に追い詰められたりすることだけは要注意だ。

  末期と言われたり、余命を言われたりしたあと、何年も元気で過ごしているがん患者の先輩で、「複合でやらなきゃダメだよね」という言葉を口にする人は多い。西洋医学、東洋医学、民間療法、健康法、食事……。がんを抱えながら生きていくために探求心旺盛な人ほど、周りが驚くような回復を遂げているようにも思う。

  自分のがんの性質をみつめ、情報を集め、自分のレベルで医療の統合化を図った努力の結果だと思う。ただ、先輩たちががんと共生できている最大の要因は、選んだ何かが効いたからではなく、自分で何かを探そうとする意欲を燃やしていったことにあるのではないかとも思うのだ。

  統合医療は今後のがん治療にとっての大きなテーマだ。

  私は最近、うっちゃっていた百万円の布団を再び使い始めた。「効き目はこれからかも」と笑いながら話せるのも今私が生きているから。振り返れば「こういう手口に乗ると命が危ない」と伝えたい思いもいっぱいある。それについては次回、触れたい。


インデックスへ

絵門トップへ