第12回 2月 5日

分かっていながら やりすぎて

  1月22日。主治医の中村清吾先生から腫瘍しゅようマーカー(CA15−3)の数値が297(正常値は25以下)まで下がったことを知らされた。

  抗がん剤「タキソール」の通院点滴治療を始めて3月で丸1年になる。去年の今頃、それまで効いていたホルモンの薬が効かなくなって数値がどんどん上がり、2千を超えた。1年たてば、今度の薬も再び効かなくなるかとヒヤヒヤしていただけにうれしかった。

  「自重じちょうして」といういつもの先生の言葉を聞きながら診察室を後にした。

  この日記の1回目、11月に「順調に下がってきたマーカーが上がった」と書いたが、あの後下がり、また上がり、再び下がって今回の数値になった。入院中、先生は「病気はのこぎりの歯のようにジグザグに良くなっていくものです。だから良くてもいい気にならず、悪くても落ち込まないように」と話していたが、その通りだと思う。

  さて、「自重」と言われたものの、先週この日記で宣言した通り、今週の私は掃除に気合を入れた。結果、ほこりと寒さで風邪をひいた。がん患者にとって免疫力を下げる風邪は禁物。がんが悪くなるきっかけになる場合もある。分かっていながらの失敗。

  どうも兼ね合いが難しい。

  がんは、疲れ過ぎてはいけないが、体を休めていれば治るという病気ではない。だから私は、できる活動はしてきたし、それが退院後の元気を支えたと実感している。

  骨転移についても同様。

  骨にがんがあると黒く写る検査(骨シンチ)の私の写真は、「黒いガイコツ?」と思うほど。まともに気にすれば体じゅうの骨が崩れてバラバラになるような気がして、歩くことさえ恐ろしくなる。とはいえ、おとなしくしていればいいというわけでもないので、私は気にしないことにしている。すると、つい重いものを持ったり、家具まで動かしてしまったり、やりすぎる。

  こんな私に身内は、いろいろ言ってもストレスを与えるだけと思ってか、このごろは何も言わない。ただ、早足で歩く私が転んだところがテレビで放送された時は、皆悲鳴をあげたという。骨が弱くなっている私の体が一番避けなくてはならないのが転ぶことなのだ。

  あの時は反省はしたが、やはり人の性分は変わらない。今も、集中して原稿を書いていたら、風邪も治ったような気がして「自重の仕方も百人百様」と威勢が良くなった私がいる。

  最近、「絵門さんが元気だと私も大丈夫っていう気がして励まされます」と、よく声をかけられる。うれしい。でも同時に、ずっとそういう私であり続けられるだろうか、という思いが心をよぎる。

  夫に「ね、これからもし私が悪くなっていったら、『やっぱりがんはダメなのか……』って、みんなをがっかりさせちゃうね」と言ったことがある。

  夫の返事は「その時は、『影武者』を立てればいいよ」だった。

  その後は、私のようにのべつまくなし喋しゃべり続ける影武者を探すのは至難の業だとかなんとか、わけのわからない話になって、気がつくと私は大笑いしていた。

  きょう5日の午前9時前後に、テレビ朝日の『スーパーモーニング』に生出演の予定。大丈夫、影武者ではございません!


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