第七回 12月18日

聖夜の誓い「負けてたまるか」

 12月14日、カウンセリング技法のセミナーを受講。資格を取ったのは2年近く前だが、その後も学ぶべきことが多く、月に1回は、資格取得者対象のセミナーに参加し勉強している。

 産業カウンセラーの面接実技試験を受けに行ったのは、聖路加に入院する4日前。救急外来でホスピスへの入院を提案された日の午後のこと。水が肺いっぱいにたまっていてしゃべるのもやっと、首は大激痛。それでも試験を受け、資格を取得。今、がん患者の方々へのカウンセリングという目標を実現できたわけだが、あんなにひどい状態の中でなぜ私は試験を受けに行けたのだろうかとよく思う。

 健康な人が普通に持つ目標にしがみついていたかったから。病人ならできないはずのことをしていれば、病気から遠ざかれるように感じていたから。ホスピスという言葉を目の前に出された日、私はその対極の何かを本能的に求め資格取得のために試験会場に向かったのだと思う。あの時私の頭の中は、「負けてたまるか、死んでたまるか」という言葉でいっぱいだった。

 がんになったとき「闘志を燃やした」という人たちの生存していく力が最も強いという調査結果がある。初めはこれを意外に思ったが、今はなるほどと納得できる。

 病名を言われて間もない頃、がんに「ありがとう」と言ったというがん患者の先輩たちの発想を立派だと思った。

 「私は何事にも感謝が足りないからがんになったのかな」などと思い、「清く穏やかな心を持って今を受け入れなくては」と自分を戒めた。

 でも正直、心の奥では「そんな風に思えるか」と反発していたと思う。その後、死を目前にし、優等生的なことを言っていられなくなった。「くやしい、負けたくない」という思いだけが心を占領し、そうなってからの方がかえって精神力も免疫力もバリバリと上がったように私は感じている。

 診察室前で、ふくよかな明るい雰囲気の女性に「本、読んだわよ。あなた告知された頃、ずいぶん荒れたのね。私もよ」と声をかけられた。

 「そこからどうやって立ち直られました?」と尋ねると、「それはね……」と、目を輝かせながら話してくれた。

 ある日届いた乳がん仲間からのクリスマスカード。可愛く美しいそのカードを開くと目に飛び込んできたのが、『こんなことで死んでたまるか!』というメッセージだった。その日から彼女は、泣いてばかりいた毎日に見切りをつけたという。5年前のこと。カードを送った友達と彼女は、今も元気。最高のクリスマスプレゼント。

 セミナーの帰り、文房具売り場を1時間以上うろうろし、やっと気に入った手帳を買い求めた。今年の手帳は、最後のページまで真っ黒に埋まり、ボロボロになった。

 新しい手帳の最後のページを眺めながら「来年もそうなればいいな」と思ったが、慌てて「来年もそうできなくてたまるか!」に訂正。

 来週は新年。新しい年を迎えられることがうれしい。


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